Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
プロローグ
「はじめまして。デザイン会社M’sの御堂夕緋(みどうゆうひ)と申します」
初めて会ったときの彼は、誰もが見惚れる整ったルックスで、とろけるような甘い笑みを浮かべていた。
握手を求め差し出された手は、大きいけれど繊細で、すらっと長く細い指は女性のもののように美しい。
「はじめまして。佐藤(さとう)と申します」
「佐藤……下の名前は?」
「華穂(かほ)です」
「華穂さん、か」
魅惑的な眼差しに気圧されながら、握手に応じると、彼は繋いだ手を軽くクイッと引き寄せて、耳もとで囁いた。
「華穂さんのようなかわいらしい女性とお会いできるなんて。週に一度の打ち合わせが楽しみになってしまいそうだ」
けっして男性経験が豊富でない私は、そんな甘い台詞を投げかけられるのも初めてで、思わず頬が真っ赤になってしまった。
それを見た彼は、私を愛でるようにニッと笑う。
私たち以外には聞こえないような囁きだったはずなのに、私のリアクションで察しがついてしまったようだ、うしろに立っていた部長が苦笑いを浮かべた。
「おいおい。うちの大事な総務をたぶらかさないでもらえるか?」
「すみません。素敵な方を見ると、つい」
「君は相変わらずだなあ」
あっはっは、なんて男ふたりで笑い合っている間も、握ったその手は離してくれない。
どんどん鼓動が早くなるが、彼から目を逸らせない。
彼の少しだけウェーブがかった長めの黒髪が、微笑む度に瞳の上と首筋ではらりと揺れて、それが妙にミステリアスだった。
初めて会ったときの彼は、誰もが見惚れる整ったルックスで、とろけるような甘い笑みを浮かべていた。
握手を求め差し出された手は、大きいけれど繊細で、すらっと長く細い指は女性のもののように美しい。
「はじめまして。佐藤(さとう)と申します」
「佐藤……下の名前は?」
「華穂(かほ)です」
「華穂さん、か」
魅惑的な眼差しに気圧されながら、握手に応じると、彼は繋いだ手を軽くクイッと引き寄せて、耳もとで囁いた。
「華穂さんのようなかわいらしい女性とお会いできるなんて。週に一度の打ち合わせが楽しみになってしまいそうだ」
けっして男性経験が豊富でない私は、そんな甘い台詞を投げかけられるのも初めてで、思わず頬が真っ赤になってしまった。
それを見た彼は、私を愛でるようにニッと笑う。
私たち以外には聞こえないような囁きだったはずなのに、私のリアクションで察しがついてしまったようだ、うしろに立っていた部長が苦笑いを浮かべた。
「おいおい。うちの大事な総務をたぶらかさないでもらえるか?」
「すみません。素敵な方を見ると、つい」
「君は相変わらずだなあ」
あっはっは、なんて男ふたりで笑い合っている間も、握ったその手は離してくれない。
どんどん鼓動が早くなるが、彼から目を逸らせない。
彼の少しだけウェーブがかった長めの黒髪が、微笑む度に瞳の上と首筋ではらりと揺れて、それが妙にミステリアスだった。
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