Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「ご無沙汰しております、田所さん。ご依頼のデザイン案、持って参りましたよ」
笑顔を崩さぬまま、御堂さんはバッグの中からノートパソコンをひょいと取り出す。
「締め切り前倒してすまない。助かるよ」
「まったくです。突然明日だなんて言うから」
「そんな無茶ぶりにもクオリティを落とすことなく答えてくれる御堂くんだからこそ、本当に助かってる」
申しわけなさそうに答えた田所部長に、御堂さんは困り顔でやれやれと首を振る。
「無茶ぶりは今に始まったことじゃありませんからね。あきらめています」
「すまないね。また徹夜させてしまったかな?」
「まさか。徹夜なんてしませんよ」
「おや。おかしいな。添付ファイルの更新日付が明け方になっていた気がするけれど」
試すようにニッと笑みを浮かべた田所部長に、御堂さんもフッと笑って肩を竦める。
ふたりが交わした仕草の示すところが私にはわからないけれど、少なくとも田所部長が御堂さんを頼りにしていることだけは理解できた。
いつもと変わらないマイペースな表情で、パソコンのセットアップを始める御堂さん。
まったく疲労や眠気などは見て取れないが……本当に徹夜明けなのだろうか?
女の子を口説いてばかりの軽薄な一面と、徹夜をしてまで仕事をやりきるプロとしての一面。
そして、そんなものを感じさせない飄々とした横顔。
いっそう彼のことがよくわからなくなってきた。
ポカンとした顔で立ち尽くしていたら、田所部長にポンと肩を叩かれた。
「佐藤さん、ありがとう。もう大丈夫だよ」
「あ、はい」
私の仕事は、お客様である御堂さんを、会議室まで送り届けること。この先の会議には必要ない。
「失礼します」そう告げて部屋を出た。
会議室のドアに背を向けて立ちながら、ほんの少しだけ寂しい気分になる。
同じ部署に働く同僚たちは、商品開発の話を対等に交わしているけれど、私だけは蚊帳の外。
『総務』である私と『開発』である彼らとは、担当する役割が違うのだがら、当たり前といえば当たり前。
けれど、どことなく疎外感を感じるのだった。
笑顔を崩さぬまま、御堂さんはバッグの中からノートパソコンをひょいと取り出す。
「締め切り前倒してすまない。助かるよ」
「まったくです。突然明日だなんて言うから」
「そんな無茶ぶりにもクオリティを落とすことなく答えてくれる御堂くんだからこそ、本当に助かってる」
申しわけなさそうに答えた田所部長に、御堂さんは困り顔でやれやれと首を振る。
「無茶ぶりは今に始まったことじゃありませんからね。あきらめています」
「すまないね。また徹夜させてしまったかな?」
「まさか。徹夜なんてしませんよ」
「おや。おかしいな。添付ファイルの更新日付が明け方になっていた気がするけれど」
試すようにニッと笑みを浮かべた田所部長に、御堂さんもフッと笑って肩を竦める。
ふたりが交わした仕草の示すところが私にはわからないけれど、少なくとも田所部長が御堂さんを頼りにしていることだけは理解できた。
いつもと変わらないマイペースな表情で、パソコンのセットアップを始める御堂さん。
まったく疲労や眠気などは見て取れないが……本当に徹夜明けなのだろうか?
女の子を口説いてばかりの軽薄な一面と、徹夜をしてまで仕事をやりきるプロとしての一面。
そして、そんなものを感じさせない飄々とした横顔。
いっそう彼のことがよくわからなくなってきた。
ポカンとした顔で立ち尽くしていたら、田所部長にポンと肩を叩かれた。
「佐藤さん、ありがとう。もう大丈夫だよ」
「あ、はい」
私の仕事は、お客様である御堂さんを、会議室まで送り届けること。この先の会議には必要ない。
「失礼します」そう告げて部屋を出た。
会議室のドアに背を向けて立ちながら、ほんの少しだけ寂しい気分になる。
同じ部署に働く同僚たちは、商品開発の話を対等に交わしているけれど、私だけは蚊帳の外。
『総務』である私と『開発』である彼らとは、担当する役割が違うのだがら、当たり前といえば当たり前。
けれど、どことなく疎外感を感じるのだった。