Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「えっと……」
戸惑う私へ、不意に真面目になった彼がそっと左手を伸ばしてきた。
右頬を優しくなぞったあと、肩にかかる髪を掬い上げ、するりと髪先まで流す。
周囲の建物のごちゃごちゃとした明かりが彼の輪郭を幻想的に浮かび上がらせていて、現実ではないどこかに攫われていくような感覚に陥った。
「ごめん、本当は気づいてた。華穂ちゃんの俺を見る目が昔とは違うこと」
ドキリとした。
ダメだ。完全に見透かされてる。
「……なにを言って――」
「しらばっくれるの?」
彼がさらに踏み出してきて、私との距離を詰めていく。
よろよろと端に追い詰められて、気が付いたら屋上を囲むフェンスと彼の間に挟まれていた。
後頭部がフェンスに当たり、規則的に絡まった細い針金がカシャンという音を立てる。
私の右脇に手をつきながら、彼が口を開いた。
「じゃあ、試してみようか」
近づいてくる瞳には、困り顔の私が映り込んでいて、彼が瞳を瞬かせるたびにゆらゆらと炎のように揺らめいている。
「五秒あげる。嫌なら、逃げ出して」
フェンスに肘までもたれた彼は、至近距離で勝手にカウントダウンを始めた。
戸惑う私へ、不意に真面目になった彼がそっと左手を伸ばしてきた。
右頬を優しくなぞったあと、肩にかかる髪を掬い上げ、するりと髪先まで流す。
周囲の建物のごちゃごちゃとした明かりが彼の輪郭を幻想的に浮かび上がらせていて、現実ではないどこかに攫われていくような感覚に陥った。
「ごめん、本当は気づいてた。華穂ちゃんの俺を見る目が昔とは違うこと」
ドキリとした。
ダメだ。完全に見透かされてる。
「……なにを言って――」
「しらばっくれるの?」
彼がさらに踏み出してきて、私との距離を詰めていく。
よろよろと端に追い詰められて、気が付いたら屋上を囲むフェンスと彼の間に挟まれていた。
後頭部がフェンスに当たり、規則的に絡まった細い針金がカシャンという音を立てる。
私の右脇に手をつきながら、彼が口を開いた。
「じゃあ、試してみようか」
近づいてくる瞳には、困り顔の私が映り込んでいて、彼が瞳を瞬かせるたびにゆらゆらと炎のように揺らめいている。
「五秒あげる。嫌なら、逃げ出して」
フェンスに肘までもたれた彼は、至近距離で勝手にカウントダウンを始めた。