Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「な、なんで、そうなっちゃうんですか……?」

「当然の成り行きだろ? 夕緋と一緒にいたって、苦労しかねぇよ。それどころか命まで危ういんだぜ?」

「で、でも、どうしてそこで『俺のところに来い』になるんですか」

「不満なのか? 贅沢なやつ。俺、これでも結構モテんだぜ? イケメンパティシエとか騒がれて、テレビや雑誌でも引っ張りだこだし」

いや、だから、そういうことではなくて。
どうして御堂さんも陣さんも、ほいほいとその気もないのに女性を口説くような真似をするのだろう。
ひょっとして、この人たちの文化なの?

私が言葉に迷っていると。

「……あんただってちゃんと分かってんだろう。自分がどうすべきか。千里の言葉、覚えてるか?」

突然真面目な顔になって、陣さんが私に釘を刺す。
千里さんの言葉が蘇り、私の胸の奥をざわつかせた。

――『夕緋と別れていただけないでしょうか』――

――『身を引いてほしいのです。あなたが夕緋のことを本当に愛しているというのなら』――

私が本当にすべきことは『御堂さんと縁を切る』。
それが、御堂さんにとっても、千里さんにとっても、ふたりを取り巻くすべての人々にとっての正しい選択肢。
そして、自分の身が危険に晒されている現状において、唯一の打開策。

頭ではちゃんと理解している。
そもそも私は御堂さんとは釣り合わない。育ちも環境も背負っているものもまるで違う、共通点は皆無。
そばにいたとしても、お互いにとってプラスになることなんて、きっとない。
< 130 / 249 >

この作品をシェア

pagetop