Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
それでも。
彼は、私を抱きしめてくれた。口づけをくれた。
御堂さんがなにを考えているかなんてわからないけれど、どうしても期待してしまうんだ。
私のことを好きだと……そばにいたいと言ってくれるのではないかって。

二度目のキスで分かったことがある。
それは、彼の腕の中にいられる時間は、私にとって幸せ以外のなにものでもないということ。

誰かのためとか、自分の保身とか、そういう細かいことは抜きにして。
ただ単純に私は彼のそばにいたい。

気持ちがまとまらずなにも言えない私。
心だけじゃなく身体も、陣さんは一歩、二歩と追い詰めてくる。
うしろには壁。これ以上、逃げ場がなくなったところで私の手を取って自らの唇に持っていき、囁いた。

「あんたが寂しいって言うんなら、俺が夕緋の代わりになってやるよ。あんたの寂しさ埋めてやる」

「……私は、誰でもいいからそばにいてほしいっていうわけでは」

「前の男なんてすぐに忘れるって。ほら、目ぇ逸らすな」

こんなに近い距離で相手の目なんて直視できるわけがない。
陣さんの真剣な眼差しに気づきながらも、見ないふりをしてうつむいた。

「あの……離れてもらえませんか?」

「お前って強情な女。まぁ、そういうやつほど落とし甲斐があるってもんで――」

「ゲームじゃないんですから! からかわないでください!」

次の瞬間。
陣さんはダンッ、と音を立てて背後の壁に手をついた。
私はびくっと肩を竦めて、条件反射で視線を上げてしまう。
陣さんとばちりと目が合ってしまって、まずいと思った。視線が外せなくなる。
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