Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
第六章 俺にその身をくれるなら
私たちは無言のままタクシーに乗り込んだ。
都心から少し離れたところにある私の自宅へと走らせる。

家の前でタクシーを降りて、もうここで大丈夫だと断ったけれど、御堂さんは玄関を入るところまで見届けると言って聞かなかった。
そういう優しさが苦しいのに。今は一分一秒でも早く彼と別れたい。

入口のオートロックを解錠して部屋に向かう。
途中の廊下にある郵便受けに目をやると、ふと私の部屋番号の受取口が開いていることに気がついた。

オートロックの内側に設置されたこの受取口は、キーロックがついていてダイヤルを回して暗証番号を入力しなければ開かない仕組みだ。
これを開けることができるのは私だけで、毎日ちゃんと中を確認してはロックをかけていたのだけれど――それなのに扉が開いているなんて。閉め忘れだろうか?
そんなこと、今までに一度だってなかったのに。

「御堂さん、ちょっといいですか?」

「どうしたの?」

違和感を感じた私は足を止め、ゆっくりと受取口に手を伸ばす。

目の位置と同じ高さにあるその扉の中に見えたものは、異様としか言えなかった。
カード状の紙が何枚も重なっていて、よく見るとそれは写真だった。

扉を大きく開いてみるとその拍子に中から一枚、写真がひらりと床に落ちる。
そこに映っていたのは――私自身。
視線はカメラを向いていない。もちろん撮られた覚えもなく――つまり盗撮だ。

なにより異常だったのは、その写真の山に突き立てられていた鋏。
郵便受けに縦にして入る程度の小さなもの――おそらく裁縫用かなにかだろう――それが一番上の一枚に突き立てられていたのだ。
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