Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
警察に連絡すると、警官がひとり駆けつけてきてくれたけれど、特になんの解決策も見い出してはくれなかった。
事情を話し、何枚かの書類にサインをした後、『以後注意するように』だけで済まされてしまったのだ。
人身に被害が出ない限りは、何の対処もしてくれないらしい。

幸いなことに家の中に侵入された形跡はない。
それでもひとりで部屋にいるのは気持ちが悪い。
犯人は一度このマンションの中にまで入り込んだのだから、いつ玄関の前に立っていてもおかしくはないのだ。
ひとりでいたくない――そんな私の心中を察してか、御堂さんはしばらく部屋に残ってくれた。

六畳一間の狭苦しい部屋で、私はベッドの縁に座り、御堂さんは壁を背にしてもたれかかる。
難しい顔で腕を組んだ彼が、口を開いた。

「問題がふたつある。まずひとつ。犯人は君のテリトリーに侵入する意思があるということ。マンションの内部に足を踏み入れ、郵便受けの暗証番号も知っていた」

「でもどうして……。マンションの入口はオートロックだし、暗証番号は私しかしらないはず……」

「オートロックなんて、悪意の前には無意味だよ。誰かが開けた隙に入ればいい。番号は、君が開ける瞬間を陰から見ていたか、犯人がプロならば造作もなく開けられるだろう。この部屋に入られなかったことは不幸中の幸いだけど、時間の問題かもしれない。合鍵くらい、市販の道具で簡単に作れてしまうからね」

淡々と推論を並べる御堂さん。そんなに恐ろしいことまで平然と言わないでほしい。

「どうすれば……」

「どうしようもない。犯人をどうにかするしかないけれど、警察は当てにならなそうだ」

御堂さんはそう言って、ため息交じり肩を竦めた。
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