Melty Smile～あなたなんか好きにならない～
「まさかこんなにも危険に晒してしまうなんて……」

「誰もこんなことになるなんて思いませんよ。悪いのは犯人ですし――」

「巻き込んだのは俺だ。……陣は正しかった。もっと早く君を遠ざけていれば、こんなことには……」

ぐしゃっと前髪を乱してやるせなく肩を落とし呟いた。

「……君に触れなければよかった」

それは私とのこれまでの関係を全否定する言葉で、胸の奥をナイフで抉られたような気分になった。

まだ一ヵ月にも満たない、短いけれど濃密だったふたりの時間。
大嫌いだった人が大好きに変わるような奇跡をたくさん目の当たりにした。
なのに。
その全部を、否定するの？

涙がこぼれそうになるのをぐっと堪えた。
確かに危険な目に遭うのは辛いけれど、だからって御堂さんと繋がりを持たなければよかっただなんて、思わない。

「私は、御堂さんのそばにいれて、よかったと思っています……」

飄々とした仮面の下にある、決意や努力。背負うものの大きさ。
どれも私がこれまで気づくことのできなかった彼の魅力だ。
そんな彼が、命がけで私を守ってくれたこと。無事でよかったと微笑んでくれたこと。息を切らして私のもとに駆けつけてくれたこと。
あきらめていた夢と向き合わせてくれたこと。
そして、口づけをくれたこと。

知らなければよかっただなんて、絶対に思わない。
たとえその先に待っているものが、別れだったとしても。
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