Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
部外者の私が取っていいものかと悩んでいると「俺が取りますよ」黒木さんが率先して応対してくれた。

「お待たせ致しました。デザイン事務所M’sです」

しかし、彼の顔が訝し気に歪む。

「え……あ……失礼ですが、どちら様でしょうか?」

困惑した様子で、私と御堂さんへ交互に視線を映し、眉をひそめる。

「え、えと……少々お待ちください」判断に迷ったのか、黒木さんは保留ボタンを押して、私たちに指示を仰いできた。

「実は、華穂さん宛てにお電話なんですが、名乗ってくれないんです……どうしましょう、繋ぎますか?」

私と御堂さんはぎょっと顔を見合わせる。
私がここにいることは誰も知らないはずなのに。いったい誰がそんな電話をかけてきたというのだろう。

「華穂ちゃん、心当たりは?」

「いえ、ありません……」

御堂さんの表情が一転して厳しいものになる。

「……黒木くん。うちにはそんな社員はいないと、断ってくれるか」

「わかりました」

黒木さんは電話の保留を解除し、丁寧に断りを入れた。
すんなり引き下がってくれたようで、すぐに受話器を置いて通話を終わらせたが、今度は私の携帯電話がデスクの上でけたたましく震え始めた。
タイミングが不気味すぎる。
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