Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「お母さん、ほかに変わったこと、ない?」

『うん。なにもないわよ』

「そっか……」

通話を終えたものの、切断ボタンを押す手は震えていた。

切手を貼っていなかったということは、犯人は直接私の実家に赴いてその封筒を投函したということだろう。
同じ首都圏内とはいえ、ここから100キロ近くも離れているのに……。

どうしてわざわざ手の込んだことを――もしかしたら犯人は、いつでも実家に手が出せるということを示したかったのだろうか。

では、半分焼かれた写真の意味とは――?
……まさか、実家に火でも放つつもりなんじゃ!?
そんなことをされては、家族の命に関わる。
私の身は危険に晒されてもかまわないけれど、家族は……。

立ち尽くしていると再び携帯電話が震えた。
届いたのはショートメールだった。普通のメールとは異なり、百文字以内の短いメッセージしかやり取りできないそれは、メールアドレスを使わずとも電話番号だけで送信することができる。
受信画面が勝手に開き、一文しかない単発メッセージが表示された。

『お前をずっと監視している』

――カシャーン――
衝撃的な内容に思わず携帯電話を取り落してしまった。
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