Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
私の落ち着かない様子を見て、御堂さんは嘆息した。

「どうしても行くと言うのなら、俺が実家までつき添うよ」

「……ですが……」

御堂さんと一緒にいたら、犯人が逆上して行動を起こすかもしれない。
これ以上犯人の神経を逆撫でするようなことはしたくない。
それに――

「……ごめんなさい。やっぱり私、御堂さんのそばにはいられません」

胸にキュッと手を当てる。
この下には、昨晩彼につけられたキスマークがある。今朝、ホテルでシャワーを浴びているときに気づいたのだ。

彼がくれた、小さな愛の証。
決して消えないその紅い跡が、嬉しかったはずなのに今はひどく虚しく感じる。

「昨日、あんなことを言ったばかりなのに、ごめんなさい……」

大きく首を振り、来ないでほしいと訴えると、彼は悲愴な表情を浮かべた。
一歩一歩後ずさると、じわりじわりと彼との間に距離が開いていく。

「結局は私も、自分の身の安全が一番大事なんです。意志の弱いズルい子だって、嫌いになってくれてかまいません。だから、もう……私には関わらないでください」

嫌われるのも仕方がない、そう思った。
けれど、御堂さんはまだ冷めきれない熱っぽい瞳で私のことを見つめている。

「謝らないで。悪いのは俺だ。華穂を苦しめる原因は、いつだって俺にある」

「そんなこと言わないでください」

たくさん苦しめられた分、たくさんのものを貰った。
例え終わりのある関係でも、ここまで誰かを好きになれたのは初めてだったから。
後悔をしていないという気持ちは、今も変わらない。

……けれど、愛情だけではどうにもならないことが世の中にはあるんだってことを、私は生まれて初めて思い知らされた。
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