Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
第七章 愛想笑いは似合わない
辿り着いた先は、都心の一等地にそびえ立つ巨大なビル群。
そのど真ん中にある一際大きな高層ビルの前で私たちはタクシーを降りた。
下層階には飲食店などの商業施設が軒を連ねていて、その上には企業がオフィスをかまえている。
「バカみたいに大きなビルだよね」
正面玄関の手前で、遠いビルの頂きを眺めながら御堂さんが忌々しく吐き捨てた。
「そもそも、自社ビルを建てて賃貸に出したところで、たいした儲けにはならないんだよ。それどころか土地代、建設費、メンテナンス費用――負担だけが膨れ上がる。それなのに無駄にバカでかい建造物を建てる意図といったら、財力を周囲に知らしめるくらいだ。宣伝効果でいえば有効なのかもしれないが……それでも悪趣味だ」
入口の脇には巨大な石のプレートが横たわっていて、このビルの名称が刻まれていた。
――御堂ビル――
「このビルは、御堂さんのお父様の――」
「そう。父が御堂財閥の権力の象徴として建築したものだ。中に入っている会社の大半はグループ傘下の企業だよ。その辺りのテナントもそう」
御堂さんが一階に入っているカフェを一瞥しながら言った。
正面玄関からは入らず、敷地をぐるりと回り関係者用通路へ向かった。
裏口を守る警備員に身分証をかざすと、警備員は姿勢を正して敬礼し、道を開けた。
「御堂さん……もしかして、お父様に会いに?」
「そう」
「待ってください、私――」
「大丈夫だよ。話は通してある。心配いらないから着いておいで」
そんなこと言われても、いきなりお父様とご対面だなんて。しかもこんな普段着で。
その上、いったいなにを話しに行くのかも聞かされていないし、不安が募るばかりだ。
そのど真ん中にある一際大きな高層ビルの前で私たちはタクシーを降りた。
下層階には飲食店などの商業施設が軒を連ねていて、その上には企業がオフィスをかまえている。
「バカみたいに大きなビルだよね」
正面玄関の手前で、遠いビルの頂きを眺めながら御堂さんが忌々しく吐き捨てた。
「そもそも、自社ビルを建てて賃貸に出したところで、たいした儲けにはならないんだよ。それどころか土地代、建設費、メンテナンス費用――負担だけが膨れ上がる。それなのに無駄にバカでかい建造物を建てる意図といったら、財力を周囲に知らしめるくらいだ。宣伝効果でいえば有効なのかもしれないが……それでも悪趣味だ」
入口の脇には巨大な石のプレートが横たわっていて、このビルの名称が刻まれていた。
――御堂ビル――
「このビルは、御堂さんのお父様の――」
「そう。父が御堂財閥の権力の象徴として建築したものだ。中に入っている会社の大半はグループ傘下の企業だよ。その辺りのテナントもそう」
御堂さんが一階に入っているカフェを一瞥しながら言った。
正面玄関からは入らず、敷地をぐるりと回り関係者用通路へ向かった。
裏口を守る警備員に身分証をかざすと、警備員は姿勢を正して敬礼し、道を開けた。
「御堂さん……もしかして、お父様に会いに?」
「そう」
「待ってください、私――」
「大丈夫だよ。話は通してある。心配いらないから着いておいで」
そんなこと言われても、いきなりお父様とご対面だなんて。しかもこんな普段着で。
その上、いったいなにを話しに行くのかも聞かされていないし、不安が募るばかりだ。