Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「待つんだ! 華穂!」
部屋を出たところで、追いかけてきた御堂さんが私の手を掴み乱暴に引き留めた。
いつもの余裕はどこへ消えてしまったのか、彼の表情は必死そのものだ。
私が通り魔に襲われたときと同じ顔をしている。心配と、恐怖と、歯がゆさの入り混じった表情。
あのときの私は駆けつけてきてくれたことに喜びを感じたけれど、今は違う。
今は……彼の愛情と優しさが、逆に苦しい。
「実家に帰ります。そうすれば御堂さんも安心して私と離れられますよね?」
「ひとりでは行かせられない。俺も一緒に――」
「それじゃあ、別れたことにならないじゃないですか。御堂さんと離れることに意味があるんですよ?」
彼の手をそっと解き、微笑んで見せた。
けれど、目の前の顔は悲愴に歪む。裏切られたみたいに愕然として私を見た。
「大丈夫です。安全だとわかるまで、実家に戻っていますから。連休が終わって会社が始まっても、私の実家なら片道二時間半もあれば通えますし――」
「華穂。やめてくれ、俺は――」
言いかけたところで、社長室の扉が開いた。
どうやら伯母様も帰るらしい。私たちのもとへ――というよりは、エレベータのある方向へ行きたかったのだろう、扇子で口もとを隠しながら歩いてきた。
「おふたりにひとつ、忠告しておきます」
すれ違う瞬間、彼女はそう言って足を止めた。
肩越しに振り返り、私たちを冷ややかに見る。
部屋を出たところで、追いかけてきた御堂さんが私の手を掴み乱暴に引き留めた。
いつもの余裕はどこへ消えてしまったのか、彼の表情は必死そのものだ。
私が通り魔に襲われたときと同じ顔をしている。心配と、恐怖と、歯がゆさの入り混じった表情。
あのときの私は駆けつけてきてくれたことに喜びを感じたけれど、今は違う。
今は……彼の愛情と優しさが、逆に苦しい。
「実家に帰ります。そうすれば御堂さんも安心して私と離れられますよね?」
「ひとりでは行かせられない。俺も一緒に――」
「それじゃあ、別れたことにならないじゃないですか。御堂さんと離れることに意味があるんですよ?」
彼の手をそっと解き、微笑んで見せた。
けれど、目の前の顔は悲愴に歪む。裏切られたみたいに愕然として私を見た。
「大丈夫です。安全だとわかるまで、実家に戻っていますから。連休が終わって会社が始まっても、私の実家なら片道二時間半もあれば通えますし――」
「華穂。やめてくれ、俺は――」
言いかけたところで、社長室の扉が開いた。
どうやら伯母様も帰るらしい。私たちのもとへ――というよりは、エレベータのある方向へ行きたかったのだろう、扇子で口もとを隠しながら歩いてきた。
「おふたりにひとつ、忠告しておきます」
すれ違う瞬間、彼女はそう言って足を止めた。
肩越しに振り返り、私たちを冷ややかに見る。