Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
犯人は捕まえたい。けれど、おいそれとできることではない。
とはいえ、御堂さんに条件を飲ませて婚約を締結させるチャンスでもある。
伯母様もぎりぎりのところで駆け引きをしているらしい。

御堂さんも伯母様の立場を理解したみたいだ。難しい顔で伏せる。

「わかりました。一日、考える時間をください」

血を吐くようにそう言った。
それを見て伯母様は細い瞳の幅をわずかに広くする。もしかしたら脈ありと考えたのかもしれない。

「いいでしょう。お嬢さんの命か、ご自分の将来か、よく考えることです」

そう言って懐から携帯電話を取り出した。

「結論を出すまで、このお嬢さんとは距離をお取りなさい。とはいえ危険でしょうから、護衛をひとりつけて差し上げます」

「……そこまでしてくださるんですか?」

「一日だけです。……明日、このお嬢さんが死体で見つかったなどと言われても、寝覚めが悪いですからね」

それだけ告げて、どこかへ電話をかけ始めた。どうやら護衛を手配してくれているらしい。

「華穂」

御堂さんが改めて私に向き直る。
視線だけは真っ直ぐに私を見つめているけれど、上手く言葉が切りだせないらしい。珍しく狼狽している。
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