Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
なんだか彼女が可哀想になってきてしまった。
それから、御堂さんの怒る姿をまた見たくない、そんな気持ちもあったのかもしれない。

「……じゃあ、手分けしてやりましょう。束を作るので、止めていってください」

私の言葉に、彼女がキラキラとした瞳をこちらへ向けた。

「手伝ってくれるんですか……?」

「たいしたことは出来ませんが、これくらいなら」

「ありがとうございます!!」

彼女は深く腰を曲げ、何度も私に頭を下げる。よっぽど切羽詰まっていたのだろう。

「さ、急ぎましょう」

なにしろ、猶予は十分しかないらしい。
印刷物をページごとにまとめて机に並べ、そこから私が一枚づつ抜き取って彼女に渡す。
彼女はその束を確認しながらホチキスで止める。
ふたりのコンビネーションで、時間までにはなんとか間に合いそう、そんなときだった。

「で、これはどういうこと?」

突然うしろから声をかけられ振り向くと、そこにはよく知るニコニコ笑顔の御堂さんが立っていた。

厳しい口調で部下を叱りつけていた面影はもうどこにも感じられない。
けれど、あんな場面に居合わせてしまった手前、今となってはその笑顔すら逆に怖い。

「社長! まだいらしたんですか! 徹夜続きだったので、とっくに帰られたかと……」

女の子の言葉に、私はハッとして御堂さんを見上げた。『徹夜続き』って……

彼は笑顔を崩すことなく、女の子に向けて首を傾げた。

「まだ仕事が残っていてね。で、どうしてお客様が君の仕事を手伝っているのか、聞いてもいい?」
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