Melty Smile～あなたなんか好きにならない～

「大丈夫です。護衛の方に、実家まで送り届けてもらいますから」

「……本当は、ずっとそばに――」

「そんなに心配しないでください」

まるで私が死地に赴くみたいに暗い顔をしているから、安心させようとして軽く微笑んで見せた。
けれどそれも逆効果だったみたいで、彼の顔がますます厳しくなる。
今日の作り笑顔は、全部失敗だった。

「……必ず迎えにいくから待っていてくれ。すべてうまくいく方法を探すから――」

「そんなに思い詰めないでください」

彼が私を抱き寄せようとしたから、そっとかわして手を握った。

「お願いですから、自由を捨てるような選択をしないでください。私は大丈夫ですから」

それを聞いた彼は余計に苦しそうな顔をする。

『大丈夫』――彼が強がっているときに使う決まり文句だ。
この言葉を使われた相手がどんなにやるせない気持ちになるか、彼は思い知ったことだろう。

けれど、私も初めてわかったことがある。
この『大丈夫』という言葉の裏側には、相手を慈しむ心と愛情があるのだと、私は身をもって経験した。

彼が私の手をぎゅっと握り返してくる。表しきれない感情すべてをその手の中に押し込めるように。