Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「俺の実家は、一瞬だけ栄華を誇った成り上がりの一族なんだよ。その上、俺らが小さい頃は確かに夕緋や千里の家と並ぶような立場だったけど、大人になる頃にはとっくに破産して、あいつらの足もとにも及ばないくらいに落ちぶれてた」
道の先を睨みつけながらも、やるせない顔で瞳を細める陣さんがいた。
心なしか車の速度が上がる。
「恥ずかしくて、悔しくて、あいつらに合わせる顔もなくて、必死にパティシエの道を究めて有名になったけど、結局は俺自身もただの成り上がりにしかすぎねぇ」
早い速度を保ったままカーブに突入して、身体がサイドに持っていかれる。陣さんはハンドルを強く握りながら、ぎりっと奥歯を噛みしめた。
「あいつらはなにも変わらず接してくれっけど、本当は一緒にいるべきじゃない。気にしない振りしてくれてんのは、同情心かもな……」
淡々と述べる陣さんだったけれど、心細さを押し殺しているようにも見えた。
なんてことない顔で御堂さんや千里さんの友人を演じつつも、実はずっと不安だったのかもしれない。
家柄という自分ではどうしようもないコンプレックスを抱えたまま誰にも打ち明けられずに過ごしてきたのだろう。
いつも高慢で揺るがない彼が、今では少し吹いただけで倒れてしまいそうなくらい覚束なく見えた。
道の先を睨みつけながらも、やるせない顔で瞳を細める陣さんがいた。
心なしか車の速度が上がる。
「恥ずかしくて、悔しくて、あいつらに合わせる顔もなくて、必死にパティシエの道を究めて有名になったけど、結局は俺自身もただの成り上がりにしかすぎねぇ」
早い速度を保ったままカーブに突入して、身体がサイドに持っていかれる。陣さんはハンドルを強く握りながら、ぎりっと奥歯を噛みしめた。
「あいつらはなにも変わらず接してくれっけど、本当は一緒にいるべきじゃない。気にしない振りしてくれてんのは、同情心かもな……」
淡々と述べる陣さんだったけれど、心細さを押し殺しているようにも見えた。
なんてことない顔で御堂さんや千里さんの友人を演じつつも、実はずっと不安だったのかもしれない。
家柄という自分ではどうしようもないコンプレックスを抱えたまま誰にも打ち明けられずに過ごしてきたのだろう。
いつも高慢で揺るがない彼が、今では少し吹いただけで倒れてしまいそうなくらい覚束なく見えた。