Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
御堂さんの言葉に、女の子の目が点になる。

「お客様……? 修理業者の方では?」

「どう見ても修理業者には見えないでしょう。十九時に来客があると伝えたよね?」

「す、すみません!」

女の子が慌てふためいて御堂さんへ頭を下げた。

「謝るなら、あっち」

そう言って私を指差す。

彼は静かに微笑んでいたけれど、言葉には言い知れぬ圧力があった。

私がいる手前、今は笑顔だけれど、本当は怒っているのかもしれない。
私がいなくなったあと、彼女を呼び出して叱りつけるのかも……。

「あの、困っているようだったので私が勝手に手伝ったんです! 彼女を怒らないでやってください!」

慌てて庇った私を見て、御堂さんは不思議そうな顔をした。

「俺が怒っているように見える?」

「それは……」

さきほどの叱声を聞いてしまったから――とは言えず困っていると、彼は悲しい声で呟いた。

「……見ていたんだね」

どうやら自力で答えに辿り着いてしまったようだ、参ったな、そう呟いて額を押さえる。

「華穂ちゃんも人がよすぎるよ。違う会社の人間まで手伝うなんて」

「……すみません。出過ぎた真似をして……」

「いや、助かったよ。でも、申し訳ないことをしたね」

失笑する御堂さん、とりあえず怒るつもりはないようなので安心した。

「華穂ちゃん、こちらへ。用件を聞こう。――新井さん、それが終わってからでいいから、一階にお茶を持ってきてくれる?」

「はい、わかりました!」

彼女の元気な返事を背に受けて、私たちはエレベータを下り一階の応接スペースへとやってきた。
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