Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
焦燥する私を嘲笑うかのように、陣さんは口の端をいやらしく跳ね上げる。
「それから、警察に助けを求めるってのもナシだ。言っておくが、捜査が入れば犯罪者として掴まるのは俺じゃなくて千里だからな」
「千里さん……? どうして――」
「俺はお前に怪我を負わせたわけでもねぇし、軽い悪戯程度の話で済むが、千里は会社のサーバーからお前の情報を勝手に盗み出したわけだからな。ましてや、次期社長が顧客の個人情報を悪用したなんて知れたら、会社もただじゃ済まない。ただでさえ経営の厳しい状態でそんな不祥事起こしたら……下手すりゃ倒産だな」
そう言って人差し指を唇に当てて内緒のポーズを作った。
喉の奥でくつくつと笑う。
「千里やその家族、社員を全員破滅させる覚悟があるなら、警察に言ってくれてもかまわねぇけど」
「……最低ですね」
「好きに言えよ。俺も人生かかってっからさ」
そう言って立ち上がると、再び私の背後に回り込み、その考えがしっかりと根づくように私の耳もとで刻みつけた。
「とにかく、大人しくしていろ」
ぎゅっと唇を噛みしめる。
抵抗しようにも、どうしようもない。家族どころか、千里さんやその周囲の人々まで人質に捕られて。
けれど、このまま黙ってここにいたら、御堂さんが――
必死に頭を巡らせるけれど、悔しいことになんの打開策も沸き上がってこない。
膝の上の手を落ち着きなく何度も握り直していたら、うしろから見ていた陣さんが私の胸もとに手を回してきた。
「そんなに怯えるな。俺だって華穂に傷なんかつけたくねぇから」
静かな声でそう言って、私の身体を抱き留める。
驚いて振り返ると、陣さんはその温もりを確かめるように瞳を閉じていた。
「それから、警察に助けを求めるってのもナシだ。言っておくが、捜査が入れば犯罪者として掴まるのは俺じゃなくて千里だからな」
「千里さん……? どうして――」
「俺はお前に怪我を負わせたわけでもねぇし、軽い悪戯程度の話で済むが、千里は会社のサーバーからお前の情報を勝手に盗み出したわけだからな。ましてや、次期社長が顧客の個人情報を悪用したなんて知れたら、会社もただじゃ済まない。ただでさえ経営の厳しい状態でそんな不祥事起こしたら……下手すりゃ倒産だな」
そう言って人差し指を唇に当てて内緒のポーズを作った。
喉の奥でくつくつと笑う。
「千里やその家族、社員を全員破滅させる覚悟があるなら、警察に言ってくれてもかまわねぇけど」
「……最低ですね」
「好きに言えよ。俺も人生かかってっからさ」
そう言って立ち上がると、再び私の背後に回り込み、その考えがしっかりと根づくように私の耳もとで刻みつけた。
「とにかく、大人しくしていろ」
ぎゅっと唇を噛みしめる。
抵抗しようにも、どうしようもない。家族どころか、千里さんやその周囲の人々まで人質に捕られて。
けれど、このまま黙ってここにいたら、御堂さんが――
必死に頭を巡らせるけれど、悔しいことになんの打開策も沸き上がってこない。
膝の上の手を落ち着きなく何度も握り直していたら、うしろから見ていた陣さんが私の胸もとに手を回してきた。
「そんなに怯えるな。俺だって華穂に傷なんかつけたくねぇから」
静かな声でそう言って、私の身体を抱き留める。
驚いて振り返ると、陣さんはその温もりを確かめるように瞳を閉じていた。