Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「陣さん!」

「どうしてそんなにあいつがいいんだ!?」

ベッドの上に放り投げられて、身体がマットレスに沈み込んだ。スプリングがギシッと大きな音を立てて軋む。

「大企業の跡取りだからか!? バカみたいに金持ってて、社長なんてやってるからか!?」

私を追うように、陣さんもベッドへ足をかける。私の腰の横に手を置いて、じりじりと追いすがってくる。

「――でもな! あいつが好き勝手やってられるのは、親の力なんだぞ!? 苦労なんてこれっぽっちも知らないで、どんなに失敗しても次期社長の椅子が待っていて、そりゃあ余裕で毎日笑って過ごしていられるよなぁ!」

狂ったように笑い、叫ぶ陣さんが悪魔に見えて、震え上がった。
私は咄嗟に上半身を起き上がらせてうしろへ後ずさる。
けれどあっさりと捕まり、両肩をベッドに叩きつけられた。

「不公平だろ!? あいつは、生まれながらにして地位も名誉も金も全部持ってる! 真っ当に苦しんで生きてる俺らの敵みたいなヤツじゃねぇか!」

体重をかけて押さえつけられ、肩が酷く痛んだ。照明を背に受けて影を落とした彼の瞳からは、涙が見えた気がした。

「あのヘラヘラした顔見てると、腹立つんだよ! 人生なめくさって、俺らをバカにしやがって!」

野生の狼のように鋭利な瞳をして、容赦なく私の首筋に牙を突き立てる。

「っ!」

貪るようにはまれて、ズキンと鋭い痛みが走った。
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