Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
すべてを持って生まれてしまった彼。――そのせいで、誰よりも重い荷物を背負わされてしまった。

彼にしかわからない苦労もたくさんあったはずだ。
どんなに頑張っても、周囲のしがらみによりあっさりと自由を奪われてしまう。未来の可能性を握り潰されてしまう。
だからこそ、彼は妥協を許さない。誰よりも自由を渇望しているから。

限られた時間の中で必死に『生きる』ことを、彼は誰よりも体現している人だ。

「だから私は御堂さんの力になりたいんです! 平気な振りして笑って、けど本当は必死に足掻いて生きている彼のそばにいたいんです!」

私だって、最初はなにも気づけなかった。ただのチャラくて軽い、お気楽人間なのだと思っていた。

彼の強がりに気づけたのは、ある種の事故みたいなものだ。
たまたま彼が真剣に働いている姿を見て、私を庇って怪我を負って――想定外の出来事が次々と巻き起こってしまったから秘密を知っただけで。
言ってしまえば、今のふたりの関係でさえも事故なのかもしれない。

「釣り合わないのは知っています! 私と御堂さんは住む世界が違う――だからって、好きになっちゃダメですか!? 自分と同じ生き方をしてきた人としか、一緒になっちゃいけないんですか!?」

瞳から涙がこぼれ落ちてきた。一筋、二筋と、頬を流れ落ちる。
堪えきれない嗚咽が、喉の奥で暴れている。
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