Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「仕方ねぇ。プランBだ」

そう呟くと、へたり込む私の腕を強く引っ張り上げ、ベッドの脇に立たせた。
近くにあったティッシュで私の涙を乱暴に拭き取りながら、外にいる御堂さんには届かないような小声で念を押した。

「わかってるよな? あいつに余計なこと言うなよ。俺の話に合わせろ」

でなければ家族に報復する、とでも言いたいんだろう。
鋭い視線で私の反論を押し込めた後ドアの前へ行き、かけられた鍵をガチャリと外した。

その瞬間、ドアと陣さんを押しのけて、御堂さんが部屋の中に飛び込んできた。

「華穂!」

「み――」

叫ぼうとしたが、慌てて口を噤んだ。余計なことを言うなと、ついさっき言われたばかりだ。
なにも言えない私を見て、ドアの脇に立っていた陣さんがニヤリと笑った。

「大丈夫か!? 怪我は!?」

駆け寄ってきた御堂さんが私の両腕に手を置き、無事を確かめるように足の先から上へ視線を滑らせた。
けれど、首筋のあたりで驚いたように目を見開いて、その動きを止めた。

え……?

一瞬その意味がわからなくて固まっていると、陣さんがやってきて、私を御堂さんから引き剥がすように抱き寄せた。

「あー、キスマーク見られた? 悪い、そういうことだから」

やっと御堂さんの視線の意味を理解した。ついさっき陣さんに襲われて噛みつかれた場所に跡が残ってしまっていたんだ。
思わず首筋に手を当てる。

けれど、その行動がまずかった。自分でキスマークだと認めたようなものだ。
御堂さんの表情が言いようのない不信感に包まれる。
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