Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「華穂の話によれば、契約締結か婚約か、どちらかを選ばなければあの性悪伯母さんは力を貸してくれないんだろう? どっちを選んだんだ? ええ?」

御堂さんの瞳が神経質に細くなった。
そんな彼の姿を見て、陣さんは吹っ切れたかのように高らかに笑った。

「いずれにせよ、俺の勝ちだな、夕緋。目的は達した。あとは金が回ってくるのを祈るだけだ。俺にできることはもうない」

「できることはない? ふざけるな。やるべきことは山積みだろう」

御堂さんが陣さんの間合いに踏み込んだ。警戒した陣さんが後ずさり、咄嗟にうしろに立っていた私を背中に隠した。

「その借金、どうするつもりだ。ずっとその場しのぎの返済ばかりで、ちっとも元本が減っていないじゃないか。今のままじゃ遅かれ早かれ破綻するぞ」

「うるさい! お前に言われる筋合いは――」

「あるだろう!?」

御堂さんが陣さんの胸もとを掴み上げ、激しく揺さぶる。
陣さんはよろけながらも掴み返し、今にも噛みつきそうな眼で抵抗する。
どちらも引く気がない一触即発という空気。

「こうなるまで、どうしてなにも言わなかった! ひとりでどうにかできるとでも思っていたのか!」

「どうしてお前にいちいち報告しなきゃなんねぇんだよ! なに様だよ!」

「俺が幼少の頃から経営学を叩きこまれてきたこと、知っているだろ!? 経営のことも借金のことも、頼ってくれればいつだって――」

「助けてくれたって? 金を貸してくれるのかよ!? いいなぁ御曹司様は配るほど金があって」

陣さんが御堂さんの腕を大きく振り払った。
双方、うしろに弾かれ、一歩分の緊迫した距離感が生まれる。
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