Melty Smile～あなたなんか好きにならない～
「そういうことを言ってるんじゃない、陣。俺は少しでも助言できたらと――」

「は！？　偉そうだな。お前は昔から器用で、人よりなにもかも抜きんでてたもんな。なにが友人だ、見下してしかいなかったくせに！」

陣さんがしゃがれた声で吠えた。
まるでこの世のすべてを呪うかのような暗鬱とした表情に、御堂さんは呆然とする。

「見下す……？　なにを言ってるんだ……？」

「お前にとっちゃ、はなから俺なんて眼中にないんだろう……貴族のお前と、平民の俺じゃ」

よろよろと後ずさりながら投げやりに呟く。妬み――というよりは、自分を貶めているかのようだ。

特別なオプションをなにも持たせてもらえず、身ひとつで生まれてきてしまった自分を呪いながら、彼は嘆きの言葉を吐く。

「持ってるものが違いすぎるんだよ……」

そう漏らした陣さんは、戦いに敗れ傷ついた兵士のように、孤独で、疲れ切って見えた。
背負うことになってしまった失望に、その身を焼き尽くされてしまったのだろうか。

希望が現実に覆い潰されて、残ったものは憎しみだった。
自分とは正反対の、輝かしい人生を送っているであろう彼へ。
最も身近で、最も恵まれた境遇に育ったであろう御堂夕緋へ。

憎悪を剥き出しにされた御堂さんは、愕然と立ち尽くしていた。

「どうしてだ、陣……」

まさか二十五年も連れ添った友人が自分をそんな目で見ていたとは、夢にも思わなかったのだろう。

「周囲が俺を大企業の跡取りとして腫れもののように扱う中、陣だけは対等でいてくれたじゃないか。なのに今さら、どうしてそんなこと……」
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