Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
『社長』という仕事は、私が思っているほど単純なものではないらしい。
ときに汚れ役を買い、他社から疎まれ、自らに傷を負う。けれど、彼はそれも覚悟の上で――
目が合うと、彼はひょいっと肩を竦め、おどけて見せた。
「さすがに今日は疲れたなあ」
そんなことをぼやきながら、両手を高く上げ、大きく伸びをする。
そういえば、二階にいた女の子が『徹夜続き』だなんて漏らしていたっけ。
やっぱり夕べは徹夜だったんじゃないか、と私は嘆息した。
「どうして嘘をついたんですか? 徹夜していないなんて」
「徹夜で働いていただなんて、仕事が出来ないことを露呈してるようなものじゃないか。なんだか恰好悪いし。華穂ちゃんに見栄を張りたいっていう男心だ。大目に見てよ」
彼はテーブルに肘をつき、髪をくしゃっとかき上げた。
いつも背筋を真っ直ぐに伸ばして堂々としている彼からは想像もつかない、だらしのない仕草。
余裕しゃくしゃくの彼はどこへ行ってしまったのか。
けれど――
「そうでしょうか。むしろ、努力している姿は恰好いいと思いますけど」
ぽつりと呟いた私の言葉に、彼は目を丸くした。
「華穂ちゃん。大切なのは結果だよ。努力はしないに越したことはない。実際、努力なんかしなくても、そつなく目的を達成できる器用な人間はいくらでもいるからね。それが出来ないのは、俺がまだまだってことで――」
「一般的には、そうですよね。でも私は、なんでもそつなくこなしてしまう人よりも、努力して、足掻いて、ちょっとみっともないくらいの方が好きです」
ときに汚れ役を買い、他社から疎まれ、自らに傷を負う。けれど、彼はそれも覚悟の上で――
目が合うと、彼はひょいっと肩を竦め、おどけて見せた。
「さすがに今日は疲れたなあ」
そんなことをぼやきながら、両手を高く上げ、大きく伸びをする。
そういえば、二階にいた女の子が『徹夜続き』だなんて漏らしていたっけ。
やっぱり夕べは徹夜だったんじゃないか、と私は嘆息した。
「どうして嘘をついたんですか? 徹夜していないなんて」
「徹夜で働いていただなんて、仕事が出来ないことを露呈してるようなものじゃないか。なんだか恰好悪いし。華穂ちゃんに見栄を張りたいっていう男心だ。大目に見てよ」
彼はテーブルに肘をつき、髪をくしゃっとかき上げた。
いつも背筋を真っ直ぐに伸ばして堂々としている彼からは想像もつかない、だらしのない仕草。
余裕しゃくしゃくの彼はどこへ行ってしまったのか。
けれど――
「そうでしょうか。むしろ、努力している姿は恰好いいと思いますけど」
ぽつりと呟いた私の言葉に、彼は目を丸くした。
「華穂ちゃん。大切なのは結果だよ。努力はしないに越したことはない。実際、努力なんかしなくても、そつなく目的を達成できる器用な人間はいくらでもいるからね。それが出来ないのは、俺がまだまだってことで――」
「一般的には、そうですよね。でも私は、なんでもそつなくこなしてしまう人よりも、努力して、足掻いて、ちょっとみっともないくらいの方が好きです」