Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
ホテルの出口へと向かい、私たちは並んで廊下を歩いた。

「あんなふうに思われているだなんて、しらなかった」

途中、御堂さんはぽつりと漏らし、額を押さえうなだれた。

信頼していた友人が、自分を恨み、貶めようとしていた事実。晴天の霹靂だったのだろう。

「全部、俺のせいだ。陣が自分を追い詰めたのも、道を踏み外したのも、華穂を巻き込んでしまったのも」

自分を責め立てる彼の姿が、見ていてつらい。
誰のせいでもない、不幸なすれ違いがたまたま重なっただけだ。誤解がさらに誤解を生み、憎しみの心を生んだ。

「御堂さんが悪いわけでは――」

「わかってる。けれど自分を責めずにはいられないよ。俺がもう少し素直でいられたら、陣との友情を壊さずに済んだのに」

沈痛な面持ちで天井を仰ぐ。噛みしめた唇が痛々しい。

「……本当に、壊れてしまったんでしょうか?」

私の問いかけに彼は立ち止まり、すがるような目でこちらを見る。

「ふたりの気持ちの根底には、お互いを想い合う気持ちがあるんですから」

大切な友人だからこそ、許せなかったのだろうけれど。
一度の過ちでふたりの絆が終わってしまうなんて悲しすぎる。

「もし陣さんを許せるのなら、もう一度、そばにいてあげたらどうでしょうか。今度はちゃんと、本音を言い合える仲になって……」

今の陣さんにはきっと御堂さんが必要だ。
心を許せる友が。支えになってあげられる存在が。
最後に別れた彼が『助けて』と言っている気がしたから。
出来ることならもう一度、ちゃんと話し合ってわだかまりを解いてほしい。
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