Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「他人を恐れずに信じることができるのは、すごい才能だよ、華穂。俺にはないものだ」

本当にそんなものを才能と呼んでいいのか――でも彼がそう言ってくれるのなら、なんだか誇らしい気分になる。
それがなんの取り柄もない私の唯一の才能であるなら、惜しみなく彼へ差し出そう。

大企業の跡取りである御堂さんの周りには、打算で近づいてきた輩の方が多かったのだろう。
気を許せば足もとを掬われる――幼い頃からそんな環境で育ってきた彼は、他人を信頼することなどできないのかもしれない。

気がつけば、私を見つめる御堂さんの表情が輝いていた。

「華穂に出会えてよかった」

誰をも虜にするその笑みで私の心をふにゃふにゃに溶かそうとする。本人は無自覚だろうけれど。

――私も、御堂さんに出会えてよかったです。

それがなんだか別れの言葉にも聞こえて、胸がざわついた。

これで私たちの関係をよく思わない人がいなくなったわけではない。
これから先、私たちがどうなるのか、彼が切り出してくれるのを、ただ黙って待つしかなかった。
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