Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「私なんかのために、お仕事を捨ててしまうんですか……?」
泣き出しそうな声で責め立てる私に、御堂さんはふっと口もとを緩ませ、困ったように笑った。
「『なんか』じゃないだろう?」
私の頬にそっと手を添え、額をこつりとぶつける。
「華穂より大事なことって、ある?」
「御堂さ――」
「そろそろ、その呼び方はやめないか。苗字はあまり好きじゃないんだ。俺自身じゃなく『親父の子』として呼ばれているようで」
ふたつの唇の間のわずかな距離に人差し指を滑り込ませ、これ以上その名を呼ばせないようにする。
「……夕緋、さん」
「よく言えました」
ご褒美をくれるみたいに、軽くちゅっと口づけをもらった。
「なにも気にしなくていいよ……華穂が俺にとって一番なのは、これから先も変わらないから」
「……でも、今まであんなに頑張ってきたのにこんなことって――」
「俺はね。『御堂』という肩書きに頼らないで、自分ひとりでなにかを成し遂げることに躍起になって生きてきたんだ。デザイナーという仕事を選んだのは、デザイン自体に執着していたわけじゃない、俺を体現するためのひとつの手段でしかない」
不安をひとつひとつ拭い去るように、私の髪を撫でながら彼が囁く。
「華穂は俺のことを御堂財閥の跡取りじゃなく、ひとりの男として見てくれるだろう? 完璧なんかじゃない、情けない俺のことも、好きだと言ってくれたから――」
少し顔の距離を離して私の瞳をしっかりと確かめたあと、ふんわりと微笑んだ。
「だからね。俺にとって一番価値のあるものは、君なんだ、華穂」
泣き出しそうな声で責め立てる私に、御堂さんはふっと口もとを緩ませ、困ったように笑った。
「『なんか』じゃないだろう?」
私の頬にそっと手を添え、額をこつりとぶつける。
「華穂より大事なことって、ある?」
「御堂さ――」
「そろそろ、その呼び方はやめないか。苗字はあまり好きじゃないんだ。俺自身じゃなく『親父の子』として呼ばれているようで」
ふたつの唇の間のわずかな距離に人差し指を滑り込ませ、これ以上その名を呼ばせないようにする。
「……夕緋、さん」
「よく言えました」
ご褒美をくれるみたいに、軽くちゅっと口づけをもらった。
「なにも気にしなくていいよ……華穂が俺にとって一番なのは、これから先も変わらないから」
「……でも、今まであんなに頑張ってきたのにこんなことって――」
「俺はね。『御堂』という肩書きに頼らないで、自分ひとりでなにかを成し遂げることに躍起になって生きてきたんだ。デザイナーという仕事を選んだのは、デザイン自体に執着していたわけじゃない、俺を体現するためのひとつの手段でしかない」
不安をひとつひとつ拭い去るように、私の髪を撫でながら彼が囁く。
「華穂は俺のことを御堂財閥の跡取りじゃなく、ひとりの男として見てくれるだろう? 完璧なんかじゃない、情けない俺のことも、好きだと言ってくれたから――」
少し顔の距離を離して私の瞳をしっかりと確かめたあと、ふんわりと微笑んだ。
「だからね。俺にとって一番価値のあるものは、君なんだ、華穂」