Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
半信半疑で彼を見つめた。
ありとあらゆるものを手にしてきた彼の、最後に求めるものは私だなんて。
全然納得できない顔の私をぎゅっと抱き寄せて、彼が言う。

「華穂が俺の名前を呼んでくれる度に、俺は自分が自分だってことを実感できる。だから仕事なんかどうだっていい。華穂さえいればいいんだ」

今まで、こんなにも自分が必要とされたことなんてない。
彼を求めるだけで私の存在意義が成り立つのなら、私はいくらでもその名を呼び続けよう。

ほんの少しだけ久しぶりの、彼の腕の中。長めの襟足が鼻先をくすぐる。
瞳を閉じて幸せな温もりに浸っていると、彼が耳もとで囁いた。

「だから、もう少しだけ待っていてほしい」

私の首筋に唇を埋めて、誓いを立てるように証を刻む。

「必ず華穂を迎えに行く。だからそれまで、もう少しだけ時間をくれ」

瞳を閉じたまま、私は頷いた。
いつまででも待っていよう。そばにいていいよと言ってもらえるその日まで。

例えどんなに待たされても、今ここにある彼への気持ちが揺らぐことはない。薄れることもない。

いつかもう一度抱きしめ合えるその日まで、彼への想いは胸の奥深くにしまっておこう。
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