Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
第九章 君のほしいもの、全部あげるよ
デザイナーという仕事がこんなにも忙しいとは思わなかった。
それがこの会社に限ったことなのか、業界全体に言えることなのかはわからないけれど。
少なくとも、事務職でいた頃よりは比べ物にならないくらい忙しくて、同時に充実した日々を過ごしていた。
「最終確認をお願いします」
印刷したデザイン案を手に、オフィスの一番奥にあるデスクへと向かう。
窓際にある、オフィス全体を見渡せるように配置されたその席は、かつて御堂さんが座っていた社長席だ。
しかし、今は別の人物がその椅子に座っている。
「ああ、すまない。俺はデザインに関してはてんでダメだから、黒木に見てもらってくれ」
そう言って、新しくその席に腰を据えた人物――元営業の村田さんは、私へひらひらと手を振ってあしらった。
このやり取りを聞いていた黒木さんが、おっかなびっくり顔を上げる。
「……俺なんかが最終確認しちゃっていいんですか? いっつも社長にけちょんけちょんにされてたのに」
黒木さんの言葉を耳にして、村田さんはひとつ咳払いをした。
あ、という顔で黒木さんが訂正する。「前社長に……」慌てて取り繕う黒木さんを見て、村田さんはフッと苦笑いを浮かべた。
それがこの会社に限ったことなのか、業界全体に言えることなのかはわからないけれど。
少なくとも、事務職でいた頃よりは比べ物にならないくらい忙しくて、同時に充実した日々を過ごしていた。
「最終確認をお願いします」
印刷したデザイン案を手に、オフィスの一番奥にあるデスクへと向かう。
窓際にある、オフィス全体を見渡せるように配置されたその席は、かつて御堂さんが座っていた社長席だ。
しかし、今は別の人物がその椅子に座っている。
「ああ、すまない。俺はデザインに関してはてんでダメだから、黒木に見てもらってくれ」
そう言って、新しくその席に腰を据えた人物――元営業の村田さんは、私へひらひらと手を振ってあしらった。
このやり取りを聞いていた黒木さんが、おっかなびっくり顔を上げる。
「……俺なんかが最終確認しちゃっていいんですか? いっつも社長にけちょんけちょんにされてたのに」
黒木さんの言葉を耳にして、村田さんはひとつ咳払いをした。
あ、という顔で黒木さんが訂正する。「前社長に……」慌てて取り繕う黒木さんを見て、村田さんはフッと苦笑いを浮かべた。