Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「それにしても……もう俺の席はなくなっちゃったのかぁ。随分と冷たいなぁ」
「いつまでも社長席を空にしておくわけにいかないだろう。代わりに座ってやってるんだ、早く戻ってきてくれ」
「感謝してるよ。俺が戻るまで、潰れないようによろしく頼むね」
そう言うと近くの椅子を引きずってきて私の横に座り、パソコンを覗き込んできた。
「で、『佐藤さん』は今、なにやってるの?」
「ええと、黒木さんに指摘された箇所を修正していて……」
デスクの脇に置いていた黒木さんのダメ出しの数々が過剰書きにされたメモを、御堂さんはまじまじと眺める。
「酷いなー黒木くん。新人相手にこんなに厳しい指摘をするなんて」
「えええ!?」
黒木さんがぎょっと目を丸くして立ち上がった。
『俺が新人のときと違う!』きっとそう言いたいのだろう。
「こんなに素敵なデザインなのに、ねぇ」
本当はそんなこと思ってもないくせに、新人教育という悪役を黒木さんにバトンタッチした今、素知らぬ顔でニコニコと笑う。
「こら。肩の荷が下りたからって、彼女だけ甘やかさないでくれよ」
村田さんの呆れた声が飛んできた。
御堂さんはそれを無視すると、椅子の背もたれに肘を置いて逆向きに座り、タイヤをシャーっと走らせて村田さんのところへ滑っていった。
社長という任を解かれて気が抜けたのか、自由奔放さが増した気がする。
「いつまでも社長席を空にしておくわけにいかないだろう。代わりに座ってやってるんだ、早く戻ってきてくれ」
「感謝してるよ。俺が戻るまで、潰れないようによろしく頼むね」
そう言うと近くの椅子を引きずってきて私の横に座り、パソコンを覗き込んできた。
「で、『佐藤さん』は今、なにやってるの?」
「ええと、黒木さんに指摘された箇所を修正していて……」
デスクの脇に置いていた黒木さんのダメ出しの数々が過剰書きにされたメモを、御堂さんはまじまじと眺める。
「酷いなー黒木くん。新人相手にこんなに厳しい指摘をするなんて」
「えええ!?」
黒木さんがぎょっと目を丸くして立ち上がった。
『俺が新人のときと違う!』きっとそう言いたいのだろう。
「こんなに素敵なデザインなのに、ねぇ」
本当はそんなこと思ってもないくせに、新人教育という悪役を黒木さんにバトンタッチした今、素知らぬ顔でニコニコと笑う。
「こら。肩の荷が下りたからって、彼女だけ甘やかさないでくれよ」
村田さんの呆れた声が飛んできた。
御堂さんはそれを無視すると、椅子の背もたれに肘を置いて逆向きに座り、タイヤをシャーっと走らせて村田さんのところへ滑っていった。
社長という任を解かれて気が抜けたのか、自由奔放さが増した気がする。