Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「ねぇねぇ。このあと佐藤さんを借りてっていいかな?」

「黒木に聞いてくれ。彼女の教育係はあいつなんだから」

「黒木くん。佐藤さんを借りてくね」

「俺には質問で聞いてくれないんですか!?」

泣き言を言った黒木さんだったけれど、ごほんとひとつ咳払いをして、真面目に言い直した。

「……連れていくのは構いませんけど、週明けに必要なデザインを作っているので、明日明後日中には終わらせてもらえないと困りますよ?」

「黒木くん、随分偉そうになったねぇ」

「っえっ……!? いや、そんなつもりはっ!」

「御堂さん、あまり黒木さんを苛めないであげてください……」

割って入るまで延々と黒木さんで遊んでいそうだったので、仕方なく私は口を挟んだ。

「すみません、今日はちょっと。これを終わらせてしまわなければならないので」

私が断ると、御堂さんはキョトンとしてこちらを見た。
再び椅子のタイヤを滑らせて、私の隣にやってくる。
にんまりと悪いことを企む顔をして、私の耳もとで囁いた。

「手伝ってあげようか? そうすれば半分の時間で終わるでしょう」

「……せっかくですが、これは私の仕事なので……」

私はあくまで新人。一日でも早く一人前になれるように、たくさんの経験を積んで知識を蓄えなきゃいけないんだ。
ここで手伝ってもらったら本末転倒。自分で苦労をするから意味があるのであって、誰かに手伝ってもらったんじゃいつまで経っても成長できない。
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