Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
きっぱりと断った私を見て、逆に御堂さんは嬉々とする。

「やっぱり真面目だなー佐藤さんは。予想してたけど」

「わかってたなら、試すようなことしないでください。意地悪ですね」

きっと私たちの会話が全部聞こえていたのだろう、村田さんが横から面倒くさそうに声を上げた。

「おいそこ、新人を邪魔するな」

「はいはい。邪魔者は退散しますよ」

「……お前、本当になにしにきた?」

「なんかここにいると落ち着くんだよね」

「……どうしようもないな、お前」

御堂さんは立ち上がり、椅子をもとあった位置に片付けると、私の肩をぽんと叩いて誰にも聞こえないような小声で囁いた。

「華穂。終わったら何時でもいいから電話して」

「……はい」

一瞬垣間見えたプライベートの姿に思わずドキリと胸が高鳴る。

私がこの会社に入社することを決めてから、けじめはつけた方がいいだろうと『佐藤さん』と呼んでくれるようになったのだが。

ふたりきりになると、彼はちゃんと私を『華穂』と呼んでくれる。
それを聞くたびに、私の胸はかき乱されて、普通ではいられなくなってしまう。
とはいえ、付き合っているわけでもなく、あれからキスのひとつもしていない。

『待っていて』その言葉から三ヵ月。
私はいったいどれだけ待ち続ければいいのだろう。

一年でも、三年でも、待てと言われれば待つけれど、その間、やり場のない愛おしさに身が引き裂かれそうになるのはどうしようもない。

今も、彼への想いは変わらない。
いつか彼は、私の想いに答えてくれるのだろうか。
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