Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
仕事が終わったのは二十三時。なんとか今日中に片をつけることができてホッとした。
驚いたのは、私が仕事を終わらせるまで、黒木さんも一緒になってオフィスに残ってくれたこと。
口では『自分の仕事が終わらなかったから』と言っていたけれど、私のデザイン案の最終確認が終わった途端に帰ったところを見ると、影ながら見守ろうとしてくれていたのではないだろうか……
「――ってことがあったんです」
仕事が終わった後、車で迎えにきてくれた御堂さんにそのことを報告すると、運転席の彼は「へぇ」と興味深そうに瞳を大きくした。
「驚いたな。もう黒木くんも立派な上司だね」
「きっと、御堂さんの真似をしているんですね」
「……どうかな」
わからない振りをしながらも、なんだか嬉しそうに笑みをこぼす。
教育とはいえ他人に厳しく接するのは、けっして楽ではなかったはずだ。
叱ったとしても、相手がその善意を受け取ってくれるかどうかは別の話だ。
ときには、嫌な顔をされ、嫌われるだけのときもある。
けれど黒木さんの場合、そうではなかった。
御堂さんが手間暇かけて植えた種は、いつの間にか芽を出し大樹へと成長していた。
自分の想いを継いでくれる人がいるというのは、どんな気分なのだろう。きっと幸せに違いない。
驚いたのは、私が仕事を終わらせるまで、黒木さんも一緒になってオフィスに残ってくれたこと。
口では『自分の仕事が終わらなかったから』と言っていたけれど、私のデザイン案の最終確認が終わった途端に帰ったところを見ると、影ながら見守ろうとしてくれていたのではないだろうか……
「――ってことがあったんです」
仕事が終わった後、車で迎えにきてくれた御堂さんにそのことを報告すると、運転席の彼は「へぇ」と興味深そうに瞳を大きくした。
「驚いたな。もう黒木くんも立派な上司だね」
「きっと、御堂さんの真似をしているんですね」
「……どうかな」
わからない振りをしながらも、なんだか嬉しそうに笑みをこぼす。
教育とはいえ他人に厳しく接するのは、けっして楽ではなかったはずだ。
叱ったとしても、相手がその善意を受け取ってくれるかどうかは別の話だ。
ときには、嫌な顔をされ、嫌われるだけのときもある。
けれど黒木さんの場合、そうではなかった。
御堂さんが手間暇かけて植えた種は、いつの間にか芽を出し大樹へと成長していた。
自分の想いを継いでくれる人がいるというのは、どんな気分なのだろう。きっと幸せに違いない。