Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「ところで御堂さんの方は、お仕事順調ですか?」

「ああ。俺は問題ないよ。けっこう適応能力ある方だし、どこへ行ってもそれなりにやる自信はある」

その言葉通り、彼は器用な人で努力家でもあるから、どこへ行ってもそれなりの実力を発揮するだろう。

どちらかというとそのマイペース過ぎる飄々としたキャラクターで、周囲の方が翻弄されているのではないかと心配してしまう。
それから、女の子に対して誤解されるような態度を取っていないかも心配だ。

「……あんまり、女性社員を口説いたりしちゃダメですよ」

「華穂以外を口説いた覚えはないけれど?」

ああ、これはダメだと思った。無自覚だ。

心配にそわそわとしている私をよそに、御堂さんは道の先を真っ直ぐに見つめ、前へ瞳を向けた。

「俺が責任を取ると約束した、千里の会社との共同プロジェクト――これが軌道に乗るまで、三年か、五年か、まだわからないけれど、順調に走りだして俺の手を離れたら、もう一度父の会社と距離を置かせてもらって、そっちに戻ろうと思っている」

そっち――もちろん、デザイン会社M’sのことだ。
経営からは離れてしまったけれど、自分がここまで築き上げた会社だ。並々ならぬ思い入れがあるのだろう。

「きっと俺が戻る頃には、華穂も一人前のデザイナーになっているんだろうな。一緒に仕事できるのが楽しみだよ」

「……はい」

御堂さんの期待に恥じない、立派なデザイナーになっていたい。
だからこそ、今は誰より頑張って、知識や経験を積み上げたいと思っている。
二十七歳という、少し遅めの出発だから、人一倍努力をしなければという覚悟もできている。
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