Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「やっぱりだめだ。陣の前で脚を出すなんて――」

「大丈夫ですよ夕緋。陣さんも、もうそんなつもりはまったく――」

「なら、華穂が俺だけのものになるように、おまじないをしておく」

「おまじない……?」

聞き返すと、夕緋は不敵にニッと微笑んで、唐突に私の身体を抱き上げた。

「ゆ、夕緋!?」

「どんなおまじないか、知りたい?」

怪しげな笑みを携えて、私の身体を抱きかかえたまま奥の寝室へと運ぶ。
部屋の明かりを点けなくても、いつかのときのように、そこにキングサイズのふかふかベットと艶やかなシルクのシーツが敷かれていることを知っている。

ベッドの上に降ろされると、ふんわりとバラの香りが漂ってきた。
指先の感触で、シーツの上にも薔薇の花びらが敷き詰められていることに気づく。
夕緋はその薄暗い部屋で、私を一面の薔薇の上に並べ、嗜むように眺めた。

「綺麗な紅だ。華穂によく似合ってる」

「……私は薔薇が似合う様な女では――」

「紅い薔薇が愛とか情熱とかを表す花なら、俺の華穂への想いによく合っているよ」

そう告げて、ゆっくりと私に口づける。
そっと丁寧に、わずかに触れ合う唇の先の感触を確かめるように。
その優しい調べに、鼓動が高鳴り身体を震わす。
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