Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
私の手を引きながら、躊躇いもなく会場の奥へと突き進んでいく御堂さん。
すれ違った人たちが、その存在に気づいたらしく、次々に驚いた顔をする。
自然と彼のオマケである私にまで視線が及んで、どことなく居心地が悪い。

「私、やっぱりここにいるべきじゃないと思います……」

「全然。むしろ、いてもらわなければ困る」

「……? それは、どういう――」

眉をひそめた瞬間。

「Yuhi!」

突如、背後からかけられた声に私たちは振り返った。

屈強な体躯の外国人がこちらを睨んでいた。
北欧系とみられるその男性は、長身の御堂さんよりも頭ひとつ分大きい。
のっしのっしとその身を揺らし、威圧感たっぷりで私たち――というより御堂さんに向かって、歩いてきた。

「It’s been ages.Remember me?」

低く、ドスの利いた声。
見た目を裏切らない、流暢な英語。
彼の鋭い眼光が私にまで及んで、思わず凍り付く。

表情に乏しいその男は、いかつい体型も相まって、怒って見えた。
なんと答えたらいいのかわからず、頭の中が真っ白になる。

背中にひやりと汗が滲んだ、そのとき。
御堂さんが私の前へと進み出た。

「Of course.」

英語で受け答えしながら、私の肩をぎゅっと抱いて、隠すように自らの懐へ押し込めた。

「It’s great seeing you again,Harold」

御堂さんが片手を挙げると、その大柄な男性はやっと笑顔になった。

パァン! と高らかな音を立ててハイタッチ。
改めて握手を交わした後、ネイティブな英語で親し気な会話が始まる。

ひとまず安心したものの、慣れない空間、恐ろし気な外国人、わけのわからない英語、一気に不安をかき立てられた私は、もう腰が抜けてしまいそうだった。

彼の胸に耳を当てながら、小さく縮こまっているしかない。
肩に回った彼の手が、温かく力強くて、頼もしかった。
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