Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「まだ十九歳の彼女に決断を下せと言う方が酷だ。周囲に押し付けられた相手と一生をともにするなんて」

千里さんがいるであろうパーティー会場の奥を見つめながら、御堂さんが呟いた。

彼女へ思いを馳せているのだろうか、珍しく重く険しい顔をしている。
その表情が彼の思いの丈を物語っているような気がした。どれだけあの少女のことを大切に考えているかを。

ただ結婚が嫌で私と付き合っているだなんて嘘をついたわけではないんだ。
それどころか、まったく逆で、千里さんを守るために――。

「御堂さん。教えてください」

彼の真正面に立ち、じっとその瞳を見据えた。私のただならぬ様子に、彼が瞳を細める。

「私をここへ連れてきたのは、このためだったんですか?」

誕生日のお祝いなど口実で。
ただ、千里さんとの政略結婚に”NO”を突きつけるためだけに、私は利用されたのだろうか。

今日一日のすべてが、千里さんを守るための布石で、本当は私のことなんて、これっぽっちも見てくれていなかったのだろうか。

私のことを『綺麗だ』と言ったことも、『付き合おうか』、『今日は帰さない』なんていう思わせぶりな台詞も。
それから、額に落とした優しい口づけも。

全部全部、でまかせだったの……?

だとしたら、彼の言動ひとつひとつにいちいち心掻き乱されていた私は、バカみたいだ。
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