Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「なぁ」陣さんが私の質問に追い打ちをかけた。
「千里のためって言うけど、お前自身はどうなわけ? 千里と結婚したいのか? したくないのか?」

「俺は……」

言葉の続きを躊躇うかのように、御堂さんは目を伏せる。

悩んでいるということは、少なからず千里さんを想う気持ちがあるってことだよね……?

でなければ、再会した瞬間、あそこまで熱い抱擁を交わすわけがない。
あの抱擁は、離れていた間に募った愛おしさを埋めるかのように、お互いを求め合う感情であふれていた。

本当は千里さんのことを愛しているけれど、彼女のために身を引いているのだろうか……?

「千里さんのこと……どう思ってますか?」

恐る恐る問いかけた私の暗い表情を吹き飛ばすかのように、御堂さんはにっこりと笑う。

「そんな顔しないでよ、政略結婚だなんて、今どきあり得ないと思うだろう?」

ごまかそうとした彼だったけれど、それは陣さんが許さなかった。

「気持ち、ハッキリしてやれよ。二股かけてんじゃねぇって」

「二股だなんて。陣だって知っているだろう、千里は小さい頃からずっとそばにいる妹のような存在で――」

「妹だぁ!? お前の態度が紛らわしいから、千里はお前のことを兄じゃなくて男として見るようになっちまったんだろ!?」

陣さんの口調が次第に苛立ち始める。

「お前が千里を散々『かわいい』、『愛してる』って溺愛したからこうなったんだ。俺はてっきりお前にもそういうつもりが――女として見るつもりがあるのかと――」

「なに言ってるんだ。千里はまだ十九歳で、俺はもう二十九――」

「いつまでもガキ扱いしてんじゃねぇよ。あのカラダ見りゃ、十分大人の女になったってわかるだろ!?」
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