Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
確かに御堂さんの弁明は言い訳にしか聞こえなかった。年の差なんてふたりの関係を説明する理由にはならない。
いつまで経っても自分の気持ちを濁して逃げる彼を見ていたら、なんだか無性に虚しくなってきてしまった。

どうして私はここにいるんだろう。無理して着飾ってまで、分不相応なこの場所に。
御堂さんの彼女でもなんでもないというのに。

……私は、浮かれていたのかもしれない。

素敵なドレスを与えられ、綺麗と誉められ、優しくエスコートされて。
いつの間にか、彼の甘い笑顔に酔わされて、自分が本当のお姫様なんじゃないかと錯覚していた。
彼の『特別』になれたような気がしていた。

もしかしたら、ほんの一瞬だけ、彼に恋してしまっていたのかもしれない。
まるで物語の中に出てくる王子様とお姫様みたいに。
この胸の痛みは、やるせない悲しみは、きっとそういうことなのだろう。

けれど彼は決して私の王子様なんかじゃない。
彼にとって、私はただの取引先の女の子。
利用こそすれ、特別な感情なんて抱くわけがない。

「……帰りますね」

冷え切ってしまった――というより、凍り付いて麻痺してしまった感情を胸に、私は背中を向けた。
けれど、そんな私の腕を御堂さんはしっかりと掴み、引き留める。

「華穂ちゃん、待って――」

「離してください」

「違う、話を――」

いつまでも離してくれない彼にどうしようもなく苛立った私は――

――パンッ

気が付いたら、彼の頬を手のひらではたいていた。
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