Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
エレベータで十階まで上がり、商品開発部のフロア内にある会議室へと案内した。
中には、打ち合わせの議事録取りを担当する入社二年目の村瀬さんが、パソコンとプロジェクタをセッティングしていた。
私たちに向かって恭しく一礼した彼女に、御堂さんが柔らかく挨拶する。
「やあ春奈ちゃん、お疲れ様。いつも準備をしてくれてありがとう。それ、似合ってるよ」
きょとんとする村瀬さんに、御堂さんは自身の髪を指差し、『それ』が髪型のことであると示す。
確かに今日の村瀬さんの髪型は、いつもとは違うアップスタイル。
「ありがとうございます!」
彼女は素直に明るい笑顔を浮かべた。
かわいらしいリアクションだなぁ。そうか、これが誉められたときの正しい返し方なのか。
こういうことに疎いから、私は一向に彼氏ができないのかもしれない。
村瀬さんは「みなさんを呼んできますね」と言い残して、会議室を出て行った。
彼女に次いで部屋を出ようとした私を引き留めるかのように、御堂さんがすかさず口を開く。
「もちろん、華穂ちゃんのサラサラストレートヘアも、俺は好きだよ。黒髪、綺麗だよね」
「いえ、そういうお世辞は本当に結構ですので」
先ほど村瀬さんに『素敵女子の上手なお世辞の返し方』を見せてもらったばかりなのに、またしても冷たくあしらってしまった。
そんな私を見て、御堂さんは気を悪くすることもなく、むしろ能天気に笑った。
「その苛立ちは、嫉妬かな? 嬉しいなあ。俺も華穂ちゃんのこと、大好きだよ」
私の苛立ちがいっそう増した。
「いえ。まったく嫉妬ではありませんから」
逃げるように部屋の出口へ向かったとき。
「ちょっと待って」
またもやうしろから呼び止められた。まだなにかあるのだろうか。
中には、打ち合わせの議事録取りを担当する入社二年目の村瀬さんが、パソコンとプロジェクタをセッティングしていた。
私たちに向かって恭しく一礼した彼女に、御堂さんが柔らかく挨拶する。
「やあ春奈ちゃん、お疲れ様。いつも準備をしてくれてありがとう。それ、似合ってるよ」
きょとんとする村瀬さんに、御堂さんは自身の髪を指差し、『それ』が髪型のことであると示す。
確かに今日の村瀬さんの髪型は、いつもとは違うアップスタイル。
「ありがとうございます!」
彼女は素直に明るい笑顔を浮かべた。
かわいらしいリアクションだなぁ。そうか、これが誉められたときの正しい返し方なのか。
こういうことに疎いから、私は一向に彼氏ができないのかもしれない。
村瀬さんは「みなさんを呼んできますね」と言い残して、会議室を出て行った。
彼女に次いで部屋を出ようとした私を引き留めるかのように、御堂さんがすかさず口を開く。
「もちろん、華穂ちゃんのサラサラストレートヘアも、俺は好きだよ。黒髪、綺麗だよね」
「いえ、そういうお世辞は本当に結構ですので」
先ほど村瀬さんに『素敵女子の上手なお世辞の返し方』を見せてもらったばかりなのに、またしても冷たくあしらってしまった。
そんな私を見て、御堂さんは気を悪くすることもなく、むしろ能天気に笑った。
「その苛立ちは、嫉妬かな? 嬉しいなあ。俺も華穂ちゃんのこと、大好きだよ」
私の苛立ちがいっそう増した。
「いえ。まったく嫉妬ではありませんから」
逃げるように部屋の出口へ向かったとき。
「ちょっと待って」
またもやうしろから呼び止められた。まだなにかあるのだろうか。