さくらが散る日には
異世界
スキップをしながら教室に向かっていた私は
登校時には気が付かなかった“場所”に今やっと気付く。
「なか…にわ?」
私立特有のこの馬鹿でかい校舎の陰に隠されて目立ちはしないけれど、
そこは確かにあった。
何十本にもなる桜の木に囲まれていて、なんというか、綺麗という言葉だけでは表現出来ないような、そんな場所だった。
その中にひときわ大きく立派な桜の木が一本だけ、まるでこの場所のすべての出来事を記憶しているかのように、強く、凛々しく、優しく、そして儚く立っていた。
まるで違う世界に来てしまったかのように錯覚させるほど、その場所は他とは違う空気に満ちていた。