さくらが散る日には
私は訳がわからなくて、そのまま固まっていることしかできなかった。
「⁉︎っ?」
………
まだ目を覚まさない青年の右手は私の左手首を掴んで離さない。
ザァッ…ー
桜の花びらが風にあおられて一斉に舞い上がる。
私は反射的ににキュッと瞼をとじる。
サァ…
風が落ち着いたのと同時に瞼を持ち上げる。
「……あ…」
さっきまで絵のように眠っていた青年の瞳には私が映っていた。
その瞬間私の中の時は止まり、呼吸をすることさえ忘れていた。