ナミダ列車
出発進行









"………は、…ろは……、"

"………い、………は、"








夢を見ていた。



寝ぼけ眼を擦って上体を起こし、鳥のさえずりが聞こえる窓の外を眺めた。…朝日。太陽。日光。

うまく物事を処理できない頭のまま、のそりとベッドから足を降ろす。

スリッパをパタパタと鳴らせた私は、タンスからお気に入りの白いワンピースを引っ張りだした。








ナミダ列車
…………………………







誰かに呼ばれていた。

確かに、呼ばれた気がしたんだ。



────だから、なんとなく引かれる思いがした。





何の目的も無い、ただ過ぎゆくだけの空虚的な日々の中で、私は、ちょっとしたきっかけを常に探していたのだと思う。

いってしまえば五月病のようなもの。





なんのために学ぶのか、

なんのために働くのか、

なんのために生きるのか、

…何もかもどうでもよくなる。

どうにもこうにもやる気がなくなって、無気力になってしまうことは人間誰しもあることだ。

そんな、まるきりスッカスカな日常に、ちゃんと生きている実感が沸いてこなかったからかもしれない。






きっと、退屈な日常を少しだけ非日常にしたかった。



それは目に見えないなにかに誘われた、唐突な思いつき。



着の身着のまま揺られてみる。

電車に乗って、漠然とした気持ちのまま終点まで乗ってみる。



────そんな、ちいさな"旅"をしたいと思ったのだ。






< 1 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop