ナミダ列車
出発進行
"………は、…ろは……、"
"………い、………は、"
夢を見ていた。
寝ぼけ眼を擦って上体を起こし、鳥のさえずりが聞こえる窓の外を眺めた。…朝日。太陽。日光。
うまく物事を処理できない頭のまま、のそりとベッドから足を降ろす。
スリッパをパタパタと鳴らせた私は、タンスからお気に入りの白いワンピースを引っ張りだした。
ナミダ列車
…………………………
誰かに呼ばれていた。
確かに、呼ばれた気がしたんだ。
────だから、なんとなく引かれる思いがした。
何の目的も無い、ただ過ぎゆくだけの空虚的な日々の中で、私は、ちょっとしたきっかけを常に探していたのだと思う。
いってしまえば五月病のようなもの。
なんのために学ぶのか、
なんのために働くのか、
なんのために生きるのか、
…何もかもどうでもよくなる。
どうにもこうにもやる気がなくなって、無気力になってしまうことは人間誰しもあることだ。
そんな、まるきりスッカスカな日常に、ちゃんと生きている実感が沸いてこなかったからかもしれない。
きっと、退屈な日常を少しだけ非日常にしたかった。
それは目に見えないなにかに誘われた、唐突な思いつき。
着の身着のまま揺られてみる。
電車に乗って、漠然とした気持ちのまま終点まで乗ってみる。
────そんな、ちいさな"旅"をしたいと思ったのだ。
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