ナミダ列車








「いやはや、良い天気だねえ」

「……そうですけど、一体あなたは…」

「まあそんな細かいことはどうでもいいでしょ」

「よくありません!」

「うん、よくない」

「ねえ、どっちなんですか!」





オニーサンこと自称ハルナさんはヘラヘラと笑うと、丸眼鏡をクイ、と正す。






「じゃあとりあえず、いろはの隠れファンってことにしといて」

「いやいや隠れすぎでしょう」




そもそも何で私の名前を知っているのかも分かっていない。

ハハハ、と笑っているハルナさんは本当のことを言っているのかも定かではないし、一体全体どうなっているんだ。





「日光行くの?」




「っ!何で分かるんですか」

「それ。さっきから観光マップ持ってるから」

「あ、なんだ、…そうか」

「ハハハ、一瞬この人不思議な能力を持ってるのかもとでも思ったー?」




ハルナさんは今度はお腹を抱えてコロコロと笑う。

身体を傾かせた拍子に華奢な首元がチラリと垣間見える。これが大人の色気とやらだ。





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