ナミダ列車
しかも私のことをおちょくって遊んでいるみたいだ。
面識のない正体不明な男が何故か私の名前を呼んできては、満更でもない顔で一口ジュースを貰うだなんて…どう考えても変。
「あーでも、うん。あながち魔法使いとあんまり変わらないかも」
「えっ…」
「ま、そこんところはあんまり気にしないでよ。で、何処行くの?ほーん東照宮か…いいねいいね。見ざる言わざる聞かざるってさ」
ハルナさんはあまりに適当だった。
私が広げていた観光マップをシゲシゲと覗き見てきては、日光に詳しいのか何やらウンチクを語り始める。
「いや、ちょ、話ズレてます」
「ほら。急に妖精が現れたと思ってくれててもいいから。それと大して変わんないよ」
「はあ?意味分かんないですから!」
「まあ、とりあえずいろはの広い心で受け止めてくださいよ」
「ええ…無理言い過ぎ……」
「あ、これ!このお店すごい美味いんだよね!分かる!俺大好きここ!」
……聞いてないや。
ハルナさんは観光マップに夢中になっている。
この人はよく日光を訪れているんだろう。私に構うことなく食いついているところを見れば簡単に分かった。