ナミダ列車






また興味なさげに外の景色でも見ているのだろうと思った。

けれど、


「…っ」


不覚にも胸を鳴らす。彼は私を真っ直ぐ見つめてきていたのだ。

ジッ…と、もさっとした黒髪の隙間からなにも言わずにただ視線を落としてくるだけ。彼の考えていることはまるで分からない。

私に対しても必要以上に首を突っ込んでくることもなく、特に深掘ってくることもない。目的なんてものもなく、ただ座ってるだけって表現がしっくりくる。



それに、本当に宇宙人かなんかじゃないかと言わんばかりにペースが掴めないし。

────なんで、あなたはそこにいるの?









「あっ!明神!次降りなくちゃだ」


…と、会話が盛り上がりすぎていつのまにか次は明神駅のところまで来てしまっていたらしい。

北鹿沼駅、板荷(いたが)駅、下小代(しもごしろ)駅を停車、通過した先にある明神駅は、一つ前の下小代駅とともに日光市の中に存在している。




ついに、日光…!

感動の思いと同時に、もっと話をしていたかった、だなんて、たかが十数分間だけの付き合いである二人に妙な名残惜しさを感じた。

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