ナミダ列車
「じゃあ何歳なんですか?」
「なーんさいでしょう」
「ねえ」
「こっちの世界では確か、10569…」
「ああ、もういいや」
トンチンカンな返答をされた。
ハルナさんはもさっとした黒髪を掻き上げると、ものすごい勢いで指で歳を数えはじめる。
いや、多分ただすっとぼけているだけだろうけど…。
突拍子もない態度。とにかく正体不明だし。接点は何処にあったのか。もしかしたらやっぱりただの人間じゃない?
「ほんと謎すぎ」
せっかくの遠出だというのに。
……ため息が出た。
「えー、いたって単純だよ」
「どこがですか…」
「単純なんだけど、それが難しいんだよな…」
「……ごめんなさい。サッパリです」
ヒョイ、と観光マップを取り上げたハルナさんは、ふざけてるのかふざけてないのかはっきりしないトーンで言葉を漏らす。
やっぱり、彼も日光に行くのだろうか。
「あ、このお土産めちゃくちゃウマイんだよなー。懐かしい」
「話コロコロ変わりますね」
「ここも写真撮りまくったなー。俺写真ヘタクソなのに」
「ていうかそれ私のだし。見てたのに取られた…」