ナミダ列車









不可抗力だった。

パクリ、といただくと私の唇に少しだけ彼の指が触れる。男らしいそれではなく、しなやかでほっそりした指。




「おいし?」

丸眼鏡の奥の瞳は優しく揺れている。

端正なつくりをしているお顔だからか、なんだかマジマジと見つめられてしまうと居心地が悪い。





「おいしい…です…って、なんで私が、」

「俺もあーんしてほしいな」

「聞いてないし嫌だし」

「えーケチー」

「可笑しいでしょう普通。こんな変な人と食べさせあいっこなんて」

「そんなに変かねえ」

「かなり変」

「そっかー」





ガタンゴトン。

旅へと思いを馳せているのか、賑やかな乗客たちの笑い声が聞こえてくる。





「やっぱ…いりますか?」

「えっ?」

「なんだか可哀想に思えたから」

「いいのっ?」

「大人げない…」

「だって、大人げある必要ナイデスカラー」




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