ナミダ列車
ハハハ、と笑うハルナさんに見栄なんてものは存在しないらしい。
普通の男性だったのなら、こんなジョシコーセーのお子さま相手にこうまでヘラヘラしないだろう。
「アーモンドと、ミルクと、オレオと、ホワイトがあります」
「なんでもいーよ」
「それが一番困る…」
「なんか遠足みたいだな」
「ねえ、ニヤニヤしないでください」
しかもこの人はチョイチョイニヤける。
まさかロリコン?やっぱり変質者?グレーTシャツのくたびれた襟元を広げ、前屈みになって口を開けるハルナさんを少しずつ受け入れはじめている自分も自分だけれど。
まつ毛が長い。
瞳を閉じているハルナさんをマジマジと見てしまうのは、彼の顔のつくりがあまりに整っているからだ。
……瞼にホクロがあるんだ。
目を開けていると分からないそれ。無防備になると同時に晒されるそれ。こんなものをあっさりと私に見せてくる変な人。
「あ、あーん…」
「ん、」
「…」
「んまい」
「そう、ですか」
ハルナさんはチョコを食べた。
結局迷った挙句にアーモンドチョコを選択した私は、すぐにボリボリと噛み砕きはじめる彼を見て思わず吹き出してしまう。